1.日本の現状

最近、日本ではいわゆるスピリチュアルに興味を持つ人が増えていると言われています。実際、スピリチュアルに関する本は良く売れており、またスピリチュアルカウンセリングやホリスティックヒーリングのビジネスをする会社も増加しています。なぜこのような現象が起こっているのでしょうか。社会的な動きを解説している人によると、現代の日本人が抱いている様々な不安、特に未来に関する不安がその理由であるだろうとのことです。たとえば、学生の就職問題とか、多くの会社の倒産とか、公的年金が破綻する可能性などによってもたらされる不安です。また、震災や津波という恐ろしい自然の力によって、多くの人々のかけがえのない命や一所懸命に働いて手に入れた財産が、ほぼ一瞬で失われてしまった経験も、その要因として考えられるのでしょう。つまり、人間の弱さや財産の空しさを改めて実感させられたため、人間の力を超える力だけではなく、自然の力をも超える力、つまりスピリチュアルの力を頼りにしたいと、多くの人が求めるようになっている可能性があるということです。物質的に豊かになったというのに、幸せにならなかっただけではなく、膨大な数の自殺者、引き籠り、他の精神的な病いを抱えている人が現われ、社会的に大きな問題が増えてきたことを、日本の国民全員が経験しています。物質的な富の限界を知らされて失望したこと、また物質的な豊かさだけを追い求めている社会ではこれらの代償を払わなければならないこと、この苦い現実を無視することはできないと思います。

ところで、スピリチュアルビジネスのサービス内容を見てみると、自己実現や本当の自分になるといった類のものもありますが、ほとんどは癒し・ヒーリング、または、病気以外の問題を解決するためのものです。このようなサービスを利用する人々は、他の方法では解決不可能と思われる苦しみの解消を何よりも求めています。つまり、非常に深く苦しんでいる人の増加こそが、スピリチュアルに興味を持つ人が増えている原因になっているという結論を出すことができると思います。

もちろん、苦しんでいる人が助けを求めることは、健全なことです。しかし、霊的なことに全く無知である上に、必死になっていること、つまり苦しみがあまりに大きく耐え難くなっていて、一刻も早くより簡単な方法でこの苦しみから解放されたいという欲求は、大きな危険性を生み出します。このような欲求によって支配されている人たちは、詐欺師の標的になり得るからです。

肉体的な痛みは、体の病気や他の問題の症候です。痛みを感じている人には、病院で検診を受けて病気が発見されたのに、いろいろな理由をつけて、治療する代わりに痛み止めを飲んで済ませてしまうことがあるようです。確かに、痛み止めによって痛みを感じなくなって楽にはなりますが、この痛みにより現されている問題が解決されることはありません。病気の症候をこのように無視すれば、病気がそのまま残ってしまうだけではなく、医学では対処できないまでに悪化する危険性さえあります。

霊的な次元においても同じことが可能です。実は、霊的な問題を簡単に解決し早く楽になりたい人は、問題の真の解決ではなく、ただ霊的な痛み止めを求めているだけなのです。人間の体(肉体)については、非常に多くの学者によって熱心に研究され、多くのことが分かってきています。それでも未知の部分はまだまだ残っており、現代の医学でも直せない病気が沢山あります。人間の心(精神)に関しては、人間の体ほどには分かっていません。ましてや人間の霊的な次元(霊魂)については、人間の精神よりもさらに分からないのです。精神科の医者が、内科の医者ほど確実な治療方法を持っていないわけですから、スピリチュアルカウンセラーや霊的な指導者が、霊的な問題を解決する確実な方法、つまり、ほぼ自動的に望ましい結果を生み出す方法を持っているはずがありません。ですから、霊的なことを少しでも理解している人は、謙遜であり、悩んでいる人のことを本当に大切にしているならば、簡単な方法によってあなたのすべての問題を解決することができるなどと言って、偽りの希望を与えることは無いのです。もし誰かが霊的な問題を簡単に解決することができると言っているならば、霊的な痛み止めを求めている人と同じように霊的なことに無知であるか、苦しんでいる人を意識的に騙している詐欺師であるに違いないのです。

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