2.スピリチュアル商品

霊的な痛み止めが要求されているところには、それを与える人が現れるのは、不思議ではありません。また、スピリチュアル市場のための「商品」を作ること、またそれを売ることは、他の市場のための商品を作って、それを売ることよりもはるかに簡単なことです。スピリチュアル商品を作るためには、2、3冊の本を読み、ちょっとした講座を受け、豊かな想像力を持つことだけで十分です。スピリチュアビジネスを行う人にとって、この商品の魅力的なところは、その機能について、家電製品のように確かめる手だては無いということです。ですから、ほとんど誰でもやる気さえあれば、何の知識や資格を持っていなくても、スピリチュアル商品を作って、それを売り出すことができるわけです。まして、自分の苦しみを和らげそうなものならば何でも手に入れたいと思うほど必死になっている消費者に満ちた市場においては、それはとても簡単です。

物質的な世界とは異なり、霊的な世界は、そこに存在しているものを見せることも測ることも、それを対象とした実験をすることも不可能です。そのために、霊的なことについては、誰でも勝手に、何の根拠も無しに、言ってみれば無責任に、どんなことでも話すことができます。けれども、誰かが霊的な世界や人間の霊的な次元について語っていることは正しいのかどうか、つまり、霊的な現実を正しく把握した上で人間の真の霊的な成長に導いているのかについては、すぐに調べることはできなくても、実際に確認する方法があります。その方法は、その人の指示に従って生きたことによって生じた結果を見てみることです。

新しい教えの結果について、すぐに知ることはできません。しかし、伝統的な宗教、幾世代にも渡って、人々が自分の生き方の基準としてきた教えが生み出した結果なら、知ることができます。伝統的な教えの結果は、多くの人々の個人的な生活においても、社会の生活やその歴史や文化においても、はっきりと表されているからです。伝統的な宗教は、その教えに従って生きることを決心する前に、この教えに基づいた生き方からはどんな結果を期待できるのだろうかを知ることができるわけです。ただ、こういった確認をするのには、長い時間と大きな努力が必要です。苦しい状態から早く、しかも最低限の努力によって脱出したいと必死に望んでいる人にとっては、難しくて、不可能に近いことかもしれません。また、伝統的な宗教は、長い経験に基づいて、人間の霊的な次元がどれほど複雑か、どれほど神秘的なものであるかを知っています。人生の問題や霊的な問題を解決する簡単な方法は存在しないとよく分かっているので、それを誰にも与えることは無いのです。人を騙さずに、移り変わりの速い世界に生きる現代人にも理解できるように、昔からの教えを忠実に伝えたいならば、教えることは簡単なことではありません。

伝統的な宗教が受け入れられにくくなっている今の時代、苦しんでいる人を利用して自分の個人的な利益を得ようとする人たちが、現代人でも受け入れやすい教えとして、早くて簡単な解決を求めている人に売り易いスピリチュアル商品を「開発」するわけです。この人たちの中には、自分の「手作り」の教えを開発する人もいますが、ほとんどの場合、いろいろな宗教や思想から理解しやすい部分や受け入れやすい部分だけをピックアップして、新しいブレンドを作るのです。いろいろな教えや思想のミックスであるこのような教えは、何の根拠も無いだけではなく、内面的に矛盾しており、非合理的な宣言から成り立っています。それでも、何かにすがりたい必死な人は、これこそあらゆる問題を簡単に解決できるものとして(このように見たいという願望もあるでしょう)、余裕を持って分析することなく、簡単にこれを受け入れてしまうのです。不思議なことに、このようなスピリチュアル商品は、何の価値がなくても、金銭的に高ければ高いほどよく売れるようです。おそらく、「価値のないものが高い値段で売られるはずがない」というような確信に基づいて、高い値段が商品の価値、つまり「治療」の効率性を保証しているように見えるからでしょう。

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